いつまで田舎にいるの?

地方に転勤して1年で転職して東京に戻ってきた社会人3年目のブログ

芝桜が散った頃

2017年の話。

このころはまだ前の会社で日々を忙しなく過ごしていた。

 

ちょうど芝桜が散った頃だった。

転勤の辞令が出て、地方都市から更に地方都市へ。

前の会社にいる以上は仕方のないことだというのは重々承知していた。

しかし、東京から段々と離れていくことや、折角転勤先で知り合えた人との関係が瞬く間に終わる瞬間には呆れて何も言えなかった。

 

そう、今回は転勤先で知り合った女性についての話をしたいと思う。

散々転勤は良くないと言ってきた身だが、それでも勿論良かったこともある。

良かったことはこれくらいかな。

 

ーーー

 

初めて会ったのは、意外にも仕事の場だった。

だからぼくも普段以上に滅茶苦茶気を遣って接した。それこそ、割れてるグラスを怪我しないように触るような感覚で。

 

仕事でどうしても連絡先を聞いておかないといけない状況になり、仕方なく聞いた。

電話帳に登録すると、LINEに登録されてしまった。

3日くらい悩んだものの、意を決してLINEをしてみた。

 

なんと返事が来るのか、来ないのか。どう思っているだろうか。

 

そもそもいきなり連絡先を聞いたわけではなくて、最初に勿論出身地の話とか、仕事の話とか、色々したあとに連絡先を聞いた。

事務的に、だけど。

 

たまたま出身地が同じで、話して盛り上がって。そういう経緯があって連絡先も聞きやすかったのかもしれない。基本的に誰であろうとそんなに興味がないから、人の話は深くは聞かないんだけど、聞かれることはある。

 

そう、「彼女いるんでしょ?」と。

あー、そういう、核心を突くような話をしちゃう、と。

 

なんて返すか1秒くらい悩んで、あまり間を開けずに返事。

「彼女はいないけど、結婚してるんだよね。」

 

ーーー

 

後日。

 

「話していい人だなって思ったけど、いい人ってすぐ結婚しちゃうよね。」

 

この時ぼくは23歳で、相手は21歳。

こんなに若い年齢の2人がする話じゃないよな…と思いながら、

 

「でも、そっちだって彼氏いるんでしょ?自分だけが可哀想な感じで言うのやめてよ。

笑」と言って流したけど、正解は分からない。それは今でも分からないまま。

 

結婚していることを隠していれば何か変わったのかもしれないし、変わらなかったかもしれない。でも、「この子に嘘をつくのはやめよう。」と最初に何故だかそう思った。

 

ーーー

 

「寂しいから。」と言われて、家に泊まりにいく。

彼氏は同じアパートに住んでいるのに。

 

「彼氏が知ったら怒るんじゃないの?」

「平気だよ。あの人は私に興味がないから。」

「もう友達といるって伝えてある。」

 

どこかバツが悪そうな顔をしていた。

 

家に呼ばれたら、そういうことだと男なら誰しもが考えるはず。

ましてや打席に立てばとりあえずバットを振るような男だ。

振り方なんて分からなくていい。でも、バットを振らなければ絶対にヒットにはならない。

でもやっぱり、この時ばかりは、この人は、何か違うなというのがあって、何もしなかった。

 

いっしょにテレビを見て、ご飯を作ってもらって、一緒に寝て。

 

この時ずっとアジカンソラニンがBGMで流れてたのは今でもはっきりと覚えてる。

 

 

ーーー

 

家に呼んで何をしたかったのか、何をしてほしかったのか。

相変わらずよく分からない。

 

でも、今まで月に1回だけしか会わなかったのに、気が付いたら週に1回は会っているような状況。

 

「今日そっち(勤務地)の方行ってるんだ。」

「お茶でもする?」

 

何回タリーズとか、ドトールとか、お世話になったか分からない。

 

ーーー

 

こういう恋愛もありなのかなと思いつつ、そもそもこれって恋愛なのかなと思ったりもして、なんだか心の振れ幅が大きい毎日だった。

 

美容院に同席したり、車で一緒に買い物に行ったり、やってないからセフレではないし、付き合っているわけではないから恋人でもないし、よく分からない関係が数か月続いた。

 

これはこれで楽しかったけれど、なんだかよく分からない気持ちのまま過ぎていく毎日をもどかしく感じた。

 

ーーー

 

休みの日、初めて本格的なデートをした。

レンタカーを借りて、海に行って、海鮮丼を食べて。

 

「最近さ、〇〇に告られて。」

 

〇〇とは、この子と同い年くらいの男の子だ。

 

「そうなんだ。」

 

誰が何をしようと、正直興味の欠片もない。

 

「なんで私なの?って思うの。あ、ちなみに今日広瀬さんと一緒にいるのは言ってないよ。笑」

「言ったら病んじゃうんだよね~。」

 

「いい人なのは分かるんだけどね。実家が医者で、本人も獣医師目指して頑張ってるし。」

 

そういう彼女はどこか物憂げな表情を浮かべていた。

 

左程傷つかなかったけど、ぼくと同時並行で他の男性ともデートしていたらしい。

まぁ、どうでもいいですね。

 

その男性のどこがダメなのか、どうしてダメなのか、とりあえず聞くだけ聞いてみた。

聞けば聞くほど、「じゃあなんで横にいるのがぼくなんだろう。」と思ったけれど、結果オーライということで。

 

ーーー

 

海につくと、夏にはまだ早かったからか海水浴客はほぼいなく、ゆったりとした時間が流れていた。

一緒に砂浜を走ったり、砂の中からキレイな貝殻を見つける遊びをしたり、「こういう時間の使い方もあるんだ。」とこの時ばかりは感心させられた。

しばらく東京にいて、こんな日常を経験したことはなかったし、東京にいると「モノ>コト」という感覚が凄く強くある。

それは別に間違いではないし、一人ひとりの価値観の問題だとは思うけれど。

 

でも、地方という閉鎖された空間で知り合った女の子は、海に行くだけでも楽しんだそぶりを見せてくれて、ぼくはそれがとても嬉しかった。

 

ーーー

 

3歩進んで2歩下がれなかった。

 

家から地方都市の夜景を一望していた。

 

この子に対して抱いているのは恋心なのか、それともいつも通り下心なのか。

そして、この子がぼくに抱いている感情はなんなのか。

 

手っ取り早くハッキリさせたかった。

 

ーーー

 

「あのさ、単刀直入に言うけど」

 

「?」

 

「友達って距離感じゃないよね。」

 

「そうだね。」

 

「どうしたいの?」

 

「どうって…」

 

「言いたいことがあるならハッキリ言ってくれていいのに。」

 「だって貴方が結婚してるから!」

「初めて会った時から、初めて会ったことがしない人だなって思って。」

「知り合えて良かったなって思ったんだよ。」

「でも、結婚してるじゃん(泣)」

 

「そんなこと言ったら、そっちも彼氏いるでしょ!」

(号泣しながら逆切れ)

 

 お互いが、お互いのことを気になっているんだけど、

それぞれ別に相手がいて。それが原因で進まないんだと。

 

「広瀬さん、優しいから何でも話せて。」

「良くないのは分かってるんだけど、どんどん惹かれていって。」

「でも心のどこかに奥さんがいるのは分かってるし、勝てないのも分かってるから。」

「だけどそれが悲しくて。」

 

ーーー

 

実は家に呼ぶ一週間前、衝撃の事実を告げらた。

 

「私ね。流産したことがあるの。今日がその子の命日なんだ。」

 

なんて声を掛けたらいいのか分からなかった。

ぼくには話を聞くことしかできない。

 

「学校休んで病院に入院してて、いざ生まれるってなる前にね、流産になっちゃって。」

「でも何よりも辛かったのが、彼氏がその間に普通に飲み会をしてたことなんだよね。」

「本当に私に興味がないんだなって思っちゃった。何で付き合ってるんだろうね。」

「でもまだ私は心のどこかで彼氏を追いかけてて、いつかきっと振り向いてくれるんじゃないかなってずっと思ってるんだ。」

 

「でもだめそう。」

 

泣き崩れる彼女を見て、何か出来ることはないのかと、必死で頭の中を探ってみたけれど、有効な回答は持ち合わせていなかった。

 

本質

 

きっと、既婚と打ち明けていなければ、もしかしたら付き合っていたかもしれない。

でもそれで付き合えても、それは全然本質ではない。相手の求めている答えじゃない。

 

きっとこの日に一緒にいるのも意味があったんだろう。

でもそこにいるべきなのは、ぼくではない。

そう、彼氏だ。

 

 

ーーー

 

家に呼んで、何もなかった。

だけど、この子のことを気に掛ける自分がいたのは事実だし、この子に恋という感情を抱いているのもまた事実だと悟った。

 

本気の恋愛は、できない。

 

「分かってると思うけど、今日でさようならをしようと思う。」

「未来のない関係なんて、続けていてもむなしいだけでしょう。」

「でも、離婚することがあったら連絡するし、その時はまた、デートとかできたらいいな。」

 

「ごめんね!ありがとう。」

 

そう言って彼女を送り出した。

 

ーーー

 

芝桜が散った頃。

 

「連絡するかどうか悩んだけど、転勤することになったから一応…。」

「そうなんだ。でも近いね。」

 

「あとね、私、大学を卒業したら結婚するんだ。」

「あの後彼氏が変わったんだけど、実家で農業やってて。」

「卒業と同時に引っ越して、私も農家のお手伝いするんだ…。」

 

声のトーンがどこか寂しげだった。

それはまるで、結婚して農家の仕事をすることが不本意かのように聞こえた。

もしくはそう思いたかっただけだったかもしれない。

 

そう言われてぼくも決心がついた。

そこまで言ってくれるなら、ぼくはぼくで前に進まないといけないなと。

 

一緒に過ごした時間って、なんだったんだろうなぁ。笑

それはちょっと悲しいけど、、、

 

君が前に進んでくれたなら、ぼくは嬉しいよ。

楽しい思い出をありがとうね。